村松事務所便り 2025年5月号(vol.256)

令和7年度の地方労働行政運営方針-「フリーランス等の就業環境の整備」

 厚生労働省は4月1日、「令和7年度地方労働行政運営方針」を策定しました。各都道府県労働局においては、この運営方針を踏まえた行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることとしています。運営方針には、重点的に取り組むべき施策として、「最低賃金・賃金の引上げに向けた支援、非正規雇用労働者への支援」「リ・スキリング、ジョブ型人事(職務給)の導入、労働移動の円滑化」「人手不足対策」「多様な人材の活躍促進と職場環境改善に向けた取組」が挙げられています。
 以下、「多様な人材の活躍促進と職場環境改善に向けた取組」の中にある「フリーランス等の就業環境の整備」について紹介します。


◆現状の課題
 フリーランスが安心して働ける環境を整備するため、令和6年11月に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(「フリーランス法」)の履行確保を図る必要があるとしています。同法は、発注事業者に、①取引条件の明示等を義務付け、報酬の減額などを禁止するとともに、②フリーランスの育児介護等に対する配慮やハラスメント行為に係る相談体制の整備等を義務付けるものです。
 また、自らの働き方が労働者に該当する可能性があると考えるフリーランスからの相談にも丁寧に対応する必要があるとしています。

◆取組事項
 フリーランスから本法の就業環境の整備違反に関する申出があった場合に、速やかに申出内容を聴取し、発注事業者に対する調査、是正指導等を行うなど、本法の着実な履行確保を図るとするものです。また、フリーランスから委託事業者等との取引上のトラブルについての相談があった際には、引き続き「フリーランス・トラブル110番」(弁護士に無料で相談できる)を紹介するなど適切に対応するとしています。
 さらに、全国の監督署に設置されている「労働者性に疑義がある方の労働基準法相談窓口」に申告がなされた場合には、特段の事情がない限り、原則として労働者性の有無を判断し、必要な指導を行うとします。また、被用者保険の更なる適用促進を図るため、監督署において労働基準法上の労働者と判断した事案については、日本年金機構年金事務所および労働局労働保険適用徴収部門への情報提供を徹底するとしています。


令和7年度の「キャリアアップ助成金」の主な変更点

 令和7年度のキャリアアップ助成金のパンフレットやリーフレットが公表されました。4月以降の変更点のポイントについて説明していきます。なお、ここでは大企業の支給額は省略し、中小企業の支給額のみを掲載します。


◆正社員化コースの変更点
 キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を企業内でキャリアアップさせ、正社員転換や待遇改善を行う企業を支援する制度です。
 まず、正社員転換等をした場合に助成される「正社員化コース」では、重点支援対象者が導入されました。重点支援対象者とは、雇入れから3年以上経過した有期雇用労働者、派遣労働者、母子家庭の母、人材開発支援助成金の対象訓練を受けて正社員へ転換した者等のことをいいます。これまでは、「有期→正規」「無期→正規」への転換の場合、2期分の合計でそれぞれ80万円、40万円が支給されていましたが、4月からは重点支援対象者に支給されることになります。
 対象以外の人には、1期(6か月)分のみ半額の40万円、20万円が支給されます。なお、新規学卒者については、雇い入れられた日から起算して1年未満のものについては、支給対象者から除外となります。


◆賃金規定等改定コースの変更点
 「賃金規定等改定コース」では、賃上げ引上げ区分が従来の2区分から4区分に細分化され、助成額が拡充されました。3%以上4%未満で4万円、4%以上5%未満で5万円、5%以上6%未満で6.5万円、6%以上で7万円となります。
 さらに、有期雇用労働者等の基本給の3%以上を引き上げた場合、1事業所当たり1回のみ20万円が加算されます。


厚生労働省が不妊治療と仕事との両立に関する資料を公開しました


◆不妊治療をめぐる現状
 日本全体の出生数は下がっているなか、不妊の検査や治療を受けるカップルは増加傾向にあり、令和3年(2021年)に不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦の数は「約4.4組に1組」となっています(厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」)。不妊治療にあたっては女性に大きな負担がかかり、キャリア継続に支障をきたすことは珍しくありません。経営者はじめ社会全体で理解を深め、対策を講じていくことが重要です。
 そうしたなか、厚生労働省から、不妊治療と仕事との両立に関する新しい資料として、「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」および「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」の2つが公開されています。ぜひ、サイトをご覧くださいませ。


両立支援等助成金に「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」が新設されました

 令和7年度から両立支援等助成金に、「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」が新設されました。既存の不妊治療両立支援コースの支給対象事業主と要件を見直したもので、更年期の心身の不調、月経困難症など女性の健康課題への対応と、仕事の両立を実現するための環境整備に取り組む中小企業を対象にしています。


◆「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」の概要
 不妊治療と仕事との両立、女性の健康課題である月経に起因する症状や更年期における心身の不調への対応と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療、女性の健康課題対応を図るために利用可能な休暇制度等(休暇制度(多目的・特定目的とも可)・所定外労働制限制度(残業免除)・時差出勤制度・短時間勤務制度・フレックスタイム制・在宅勤務等)を導入し、労働者に制度を利用させた中小企業事業主に助成するものです。この助成金は事業所単位ではなく事業主単位で支給です。


◆助成金の種類
 助成金は、支給要領に定める次の場合に支給します。

イ 不妊治療
 不妊治療と仕事との両立支援制度について、労働協約または就業規則等の規定整備により導入し、対象労働者がいずれかの制度を5日(回)以上利用した場合に支給する。

ロ 女性の健康課題対応(月経)
 月経に起因する症状への対応を図るための制度について、労働協約または就業規則等の規定整備により導入し、対象労働者がいずれかの制度を5日(回)以上利用した場合に支給する。

ハ 女性の健康課題対応(更年期)
 更年期における心身の不調への対応を図るための制度について、労働協約または就業規則等の規定整備により導入し、対象労働者がいずれかの制度を5日(回)以上利用した場合に支給する。


2025.4~在職老齢年金支給停止額51万円 (前年度50万円)、2026.4~62万円です。