村松事務所便り 2026年11月号(vol.274)

外国人を雇用する事業主への厚生労働省による支援策

 厚生労働省のホームページでは、事業主の外国人雇用を支援するための制度やツールとして、以下が紹介されています。


◆外国人雇用管理アドバイザー
 外国人労働者の雇用管理の改善や職業生活上の問題などについて、専門的な知識や経験を有するアドバイザーが、各企業の実態に応じた相談・指導を無料で行ってくれます。希望する場合は、近くのハローワークに問い合わせます。


◆人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備コース)
 外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組んだ場合に、20万円~25万円が支給されます。受給には、雇用労務責任者の選任、就業規則・社内マニュアル等の多言語化、一時帰国のための休暇制度の整備等の要件があります。


◆外国人労働者の人事・労務に役立つ支援ツール
① 外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集
 採用、賃金、労働時間といった雇用管理での場面ごとに、企業担当者が外国人社員に説明する前に読んでおくとよいポイントと、実際に外国人社員にそのまま話したり見せたりして理解していただくことを目指した「やさしい日本語」による説明の例文や図表が紹介されています。

② 雇用管理に役立つ多言語用語集
 人事・労務の場面でよく使用する労働関係、社会保険関係の用語約420語について、やさしい日本語のほか、9言語(英語、韓国語、中国語、ベトナム語、ネパール語等)により、定義・例文を検索できる用語集です。

③ モデル就業規則
 やさしい日本語で作成された就業規則です。

【参考】 
外国人の雇用 |厚生労働省


厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月~)

 令和8年10月から、企業の人事・労務管理に関わる重要な制度変更が実施されています。厚生労働省が公表した「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)」では、以下の項目が挙げられています。


◆雇用・労働関係
〇企業へのカスタマーハラスメント対策等義務化の施行
〇同一労働同一賃金ガイドライン等の改正
〇最低賃金の改定


◆年金関係
〇企業規模要件撤廃等に伴う経過措置(就業調整を減らすための保険料調整)の導入
〇短時間労働者の被用者保険の適用における賃金要件の撤廃
〇最低賃金の減額特例対象者に対する被用者保険の適用に関する措置
〇育児期間の国民年金保険料免除制度の導入
↓
 これらの背景は、多様な労働者が活躍できる就業環境の整備と被用者保険の適用拡大です。
 なかでも注目すべきが「企業へのカスタマーハラスメント対策等義務化の施行」です。カスハラおよび就活セクハラを防止するために必要な雇用管理上の措置が、すべての企業に義務付けられました。自社の対応に抜け漏れがないか、慎重な確認が必要です。
 また、パート・アルバイトを多く雇用する企業では、最低賃金の引上げや被用者保険の適用拡大により、人件費や労務管理に影響が及ぶ可能性が大きいです。
 さらに、同一労働同一賃金ガイドライン等の改正についても、自社の待遇や手当の取扱いについて説明を求められた場合に適切に対応できるか確認しておきたいところです。


◆まず「手当」を総点検
 例えば、家族手当を、契約更新を繰り返すなど相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期雇用労働者について、正社員と同じ条件を満たしているのに不支給としていないでしょうか。住宅手当も要注意です。転居を伴う配置転換の有無に応じて支給するものであるなら、配置転換があるパート・有期雇用労働者について、不合理な待遇差がないか確認しましょう。


◆休暇・福利厚生も「賃金ではないから安心」ではない
 チェック対象は手当だけではありません。夏季・冬季休暇、病気休職、福利厚生施設なども、正社員とパート・有期雇用労働者との間に不合理な待遇差がないか、その差に合理的な理由があるかを確認する必要があります。


◆「説明できるか」まで確認を
 今回の改正では、待遇の違いについてパート・有期雇用労働者から説明を求められた場合の対応も重要になります。雇入れ時に明示する労働条件として、待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨が追加されました。
 ↓
 改正を機に、待遇表と就業規則を並べて、自社の「同一労働同一賃金対応は本当に大丈夫か」を点検してみましょう。


【参考】
・ 同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省
・ 制度変更(令和8年10月)|厚生労働省


試用期間だから自由に辞めさせられる?


◆試用期間でも「雇用契約」は成立
 「試用期間中だから、仕事ぶりを見て合わなければ辞めてもらえばいい」――そんなふうに考えていませんか?
 実は、試用期間中だからといって、自由に解雇できるわけではありません。
 試用期間とは、従業員の適性や能力などを見極め、本採用するかどうかを判断するための期間です。試用期間中とはいえすでに雇用契約が成立しているため、本採用を見送る場合も、会社の自由な判断でいつでもできるわけではありません。


◆「何となく合わない」では難しい
 試用期間中の解雇や本採用拒否は、通常の解雇よりも会社側に認められる範囲が広いとされる一方、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合には、解雇権を濫用したものとして無効となります。
 「仕事を覚えるのが遅い」「職場になじめていない」といった理由だけで解雇することは難しく、本人への指導を行ったが改善しない、試用期間を延長しても改善しない、他部署への配置も検討したが適当な部署がないなど、客観的・合理的な理由が必要です。


◆日頃からの備えが大切
 「本採用するか迷う」というケースは珍しくないからこそ、日頃から勤務状況や指導内容、本人の改善状況などを記録しておくことが大切です。
 試用期間の延長についても、必要と判断したときにスムーズに実施できるよう、就業規則や雇用契約書に定めておくとよいでしょう。


【参考】
試用期間|裁判例|確かめよう労働条件|厚生労働省